村山談話・河野談話に未来はあるか?
第30回 慰安婦問題には「事実」の問題と「政治」の
問題がある
慰安婦問題には、「事実」の問題と「政治」の問題がある。
「事実」の問題では、「強制連行」がないということは
日韓両政府とも認識していた。
だが「政治」の問題では、
もうそれは認められなくなっていた。
そこで韓国側から、政治的に「強制連行」さえ認めれば
金銭的補償を求めないというメッセージがあり、
これを受けて日本政府は、一度認めて謝りさえすれば
政治的にこの問題は落着すると判断した。
今となっては大甘だったとしか言いようがないが、
当時の日本政府はこれで日韓関係はより盤石になると
信じていたのだ。
こうして1993年(平成5)、日本政府は慰安婦問題の
「第2次調査」に乗り出した。
とはいえ前年の第1次調査であらゆる資料を調査して
「強制連行の証拠はない」と結論づけており、
今さら新事実が出るわけもない。
この「第2次調査」は「事実」の問題を放棄し、
「政治」の問題に対処するために「強制連行」を
認めるという結論ありきで行なわれたのだ。
そのため、それまで消極的だった元慰安婦の
聞き取り調査が行われることになった。
既に「吉田証言」の証拠価値が失われている以上、
他に使える資料はなかったのである。
韓国人の証言ならば、元慰安婦だけでなく業者、
特に女衒(ぜげん)からの聞き取りをすれば、
もっと客観的な事実がわかった可能性もあるが、
これは「事実」の真相解明の場ではなく、
あくまでも「政治」のセレモニーだ。
韓国側が用意した証言者16人は、ほぼ全員が
日本の戦争責任追及をやっている市民団体で
既に証言をしていた人物だった。
外務官僚に福島瑞穂弁護士らを加えた調査団一行が訪韓、
普通なら韓国政府の施設が用意されるはずだが、
調査の場所となったのは慰安婦訴訟を支援する
市民団体の事務所。
ここで一行は支援団体やマスコミにもみくちゃにされ、
「まず謝罪してから始めろ!」などの怒号が飛び交う
なかで聞き取りを行った。
そしてこの屈辱の聞き取りで得られた、
しかも裏付け調査は一切ない証言だけが、「第2次調査」で
「強制連行」を認める唯一の証拠となったのだった。